八十八夜は季節を知らせる雑節のひとつで、立春から数えて88日目の日を指し、毎年5月2日頃がこの日にあたりますが、今年は5月1日(土)です。「八十八夜の別れ霜」といわれるように、この頃から霜が降りなくなり、日に日に夏めいてきます。八十八を組み合わせると「米」という字にもなり、農家では稲の種まきや、茶摘みが始まります。
八十八夜といえば茶摘みというイメージの人も多いのではないでしょうか。「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘みはないか あかねだすきに菅の笠 日和続きの今日このごろを 心ののどかに摘みつつ歌う 摘めよ 摘め摘め 摘まねばならぬ 摘まにゃ日本の茶にならぬ」。この文部省唱歌の「茶摘み」がきっかけに日本全国に八十八夜といえば茶摘みというイメージが定着しました。実際の茶摘みの時期は九州から北上していくので八十八夜の頃はだいたい関西あたりが茶摘みの時期になることが多いようです。絣(かすり)に赤いたすきがけの茶摘みの衣装はこの季節の風物詩でもあります。また、八十八夜に摘んだお茶を飲むと長生きするともいわれています。
「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の忘れ霜」とは、急に気温が下がって遅霜(晩霜)が降り、農作物に被害を与えることを警戒した言葉です。農作物の多くが新芽を出したりして、育ち始める頃なので、この時期の遅霜は農作物に大きな被害を与えます。しかし、八十八夜が過ぎれば、遅霜が降りることは少なくなり、気候も安定することから、八十八夜は昔から農作業の目安とされ、農家ではこの頃から本格的に農作業にとりかかりました。
八十八夜の頃はまさに新茶の季節です。この時期のみずみずしい新芽を摘んで作られたお茶のことを新茶(一番茶)と言います。一番茶から約50日後に摘んだものは二番茶、地域によっては三番茶や秋冬番茶を飲むところもあります。八十八夜に摘まれた新茶を飲むと病気にならない、長生きするなど、縁起の良い言い伝えも、実際、新茶は二番茶に比べてカフェインやカテキンが少なく、テアニンという旨味成分が豊富に含まれていて、リラックス効果が期待できると言われています。旨味と渋み、苦味のバランスが優れているのも新茶の魅力です。栄養もおいしさも優秀な新茶を旬の時期に味わいたいですよね。