雨水は、二十四節気のひとつで、立春の次、春の2番目にあたる節気です。空から降るものが雪から雨に変わり、雪が溶け始める頃という意味が込められています。「暦便覧」には「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり」と記されています。実際は積雪のピークであり、それゆえ、この時節から寒さも峠を越え、衰退し始めるとみることもできます。雨水は毎年2月18日~19日頃で年によって変わりますが、2021年は2月18日になります。太陽の位置を表す黄経では330度に来ています。
春の大地は潤い、山々に霞がぼおっとたなびき、草木が芽を出し始める季節です。かつて雨水の初候は「獺魚を祭る(かわうそ うおをまつる)」でした。日本酒に「獺祭(だっさい)」という有名なお酒がありますね。獺という動物はこの時期になると、氷が溶けた川にもぐって魚を捕ります。くわえた魚を岸辺に置くとまた水にもぐって漁を続け、こうして川辺には戦利品の魚がずらりと並び、それからゆっくり食べていくといいます。この様子がまるでご先祖様にお供えしているかのようなので「獺魚を祭る」という季節の言葉になりました。明代の伝統行事の本「月令広義(げつりょうこうぎ)」には「獺が魚を祭らないと盗賊が増える」と書かれています。つまり、雨水の時期に川が氷に閉ざされていて獺が魚を獲れないでいると、春の種まき、秋の収穫に影響が出て、農民は食べていけず泥棒になる者が増えるというのです。豊作か凶作かは命に直結していたことが伺える言葉です。だからこそ季節の変化にこのように敏感になったのでしょう。
雨水の時期は畑に肥料を入れる時期だそうで、中国には「立春天漸暖、雨水送肥」(立春を過ぎるとだんだん暖かくなり、雨水になると肥料を施すのに忙しい)ということわざがあります。また、雨水(あまみず)は農民にとって天からの貴重な贈り物です。この時期、早春の雨がしとしとと降ってくれればその年の豊作が期待できます。同じ中国のことわざに「雨水下落、下秧無着」(雨が降らなければ苗を植えても根付かない)というのがあります。
この時期に中国の伝統行事「元宵節(げんしょうせつ)」が始まります。「立春」の時期には「春節」、「雨水」の時期には「元宵節」です。元宵節とは正月十五(旧暦1月15日)のことで、新年最初の満月の日で、半月にわたって続く春節のお祝い最後の日です。この日はかつて街中にランタンを飾って楽しみました。中国文化の影響を受けた長崎でも元宵節の日には中華街を中心にランタンフェスティバルが大々的に行われています。日本で、ひな祭りが行われるのは3月3日、雨水の期間の最後の頃です。もともとは旧暦の3月3日に行われていたため「桃の節句」と呼ばれていますが、明治時代に新暦の3月3日に変更されたため、この時期はまだ桃の花は咲いていません。雨水の旬の食べ物は、「いよかん」「フキノトウ」、雨水の季節の花は「クロッカス」がありますので、是非、チェックして季節を感じてみてください。