2月12日は、レトルトカレーの日です。1968年(昭和43年)のこの日、日本初のレトルト食品である「ボンカレー」が発売されました。大阪府大阪市中央区に本社を置き、「ボンカレー」に代表される食品・飲料を製造・販売する大塚食品株式会社が記念日として「ボンカレーの日」と「レトルトカレーの日」で制定、それぞれ一般社団法人 日本記念日協会により認定・登録されました。
「ボンカレー(Bon Curry)」の名前の「ボン」はフランス語の形容詞”bon”(よい、おいしいの意味)に由来します。一人暮らしの独身男性でも温めるだけで簡単に食べられることから「独身男性のカレー」という意味で「チョンガーカレー」という案もありました。レトルトカレーの代名詞とも言える「ボンカレー」は、2018年(平成30年)で50周年を迎えたロングセラー商品です。発売当時の宣伝は「3分温めるだけですぐ食べられる」という内容のものでした。宣伝からも分かるように、保存性よりも簡便性を前面に打ち出しており、インスタント食品の一種として普及していきました。現在の主流は1978年(昭和53年)に発売されたフルーツベースの「ボンカレーゴールド」で、温色で描かれた同心円のパッケージで知られ、甘口・中辛・辛口・大辛の4種類があります。CMキャラクターには、巨人軍の王貞治、郷ひろみ、田村正和、所ジョージ、松坂慶子などが起用されてきました。
1964年(昭和39年)、関西でカレー粉や即席固形カレーを製造販売していた会社を、大塚グループが引き継いだのが大塚食品の始まりです。当時はカレーといえば洋食の代表で、ごちそうメニュー、カレー粉や缶詰での販売が主流でしたが、メーカー間の競争が激しく、他社と同じものを作っても勝ち目はない、なにか違ったものを作りたいと考えたことが背景にあります。そんなときふと目に留まったのが、米国のパッケージ専門誌「モダンパッケージ」に掲載されていた「US Army Natick Lab」の記事でした。缶詰に代わる軍用の携帯食としてソーセージを真空パックにしたものが紹介されていて、この技術をカレーと組み合わせたら、お湯で温めるだけで食べられるカレーができるかもしれないと考えたそうです。この新しい技術との出会いをきっかけに一人前入りで、お湯で温めるだけで食べられるカレー、誰でも失敗しないカレーのコンセプトで開発がスタートしました。
新技術完成までの道のりは長く、「一人前入りで、お湯で温めるだけで食べられるカレー、誰でも失敗しないカレー」を完成させるためには、「常温で長期保存が可能であること」「保存料を使わないこと」が絶対条件でした。今では当たり前のこととなっている食の安心・安全へのこだわりですが、当時はパウチにする包材もなければレトルト釜もありませんでしたが、試行錯誤の上、自分たちで作りました。当時は牛肉がとても高価で、十分に確保するのが難しく牛肉100%なんて夢のような贅沢と思われていた時代ですが、ボンカレーは牛肉100%にこだわり、とっておきのごちそうメニューとして食卓に提供されました。1968年当時の価格は80円でしたが、多くの人は高いと感じていたようです。同じ頃、大人のカレーとして登場した固形タイプの「ハウスジャワカレー」は、125gの5皿分で価格は80円。一方、ボンカレーは180gで1人前。確かに割高感は否定できないです。当時はちょっとした高級品だったのですね。このボンカレーが開発した技術を基に、現在、様々なご当地カレーが登場し、弊社も黒毛和牛「きたかみ牛」を使ったレトルトカレー「きたかみ牛すじカレー」を商品化することができました。