お彼岸

919日からの4日間は普通の会社は連休のため、シルバーウィークと言われており、2325日を休むことができれば9連休が実現します。シルバーウィークは、夏休みが終わってから11月までにある唯一の連休ということになります。しかし、本来、この時期は秋の彼岸です。「彼岸」は、サンスクリット語の「波羅密多」から来たものと言われ、煩悩と迷いの世界である【此岸(しがん)】にある者が、「六波羅蜜」の修行をすることで「悟りの世界」、すなわち【彼岸(ひがん)】の境地へ到達することができるというものです。太陽が真東から上がって、真西に沈み、昼と夜の長さが同じになる春分の日と秋分の日をはさんだ前後3日の計7日間を「彼岸」と呼び、この期間に仏様の供養をすることで極楽浄土へ行くことができると考えられていたのです。今年の秋の彼岸の入りは9月19日、お中日は9月22日(秋分の日)、彼岸明けが9月25日となります。

この悟りの境地「波羅密多」を、川を挟んだ向こう岸、すなわち「彼岸」に例えたのが私達日本人の伝統行事「お彼岸」なのです。反対に、私達の生きる煩悩の世界は此方側の岸「此岸」と呼ばれています。日本古来の自然観や先祖崇拝の影響から、亡くなった家族やご先祖は迷いのない「彼岸」へと渡り、時々私達の生きる此岸に姿を現すと考えられるようになりました。春分の日と秋分の日には、太陽が真東から上り、真西へと沈みますが、それによって彼岸と此岸とが通じやすくなり、これらの時期に先祖供養をすることでご先祖の冥福を祈るとともに、自らもいつか迷いのない彼岸に到達できるよう願ったのです。一口に「お彼岸」と言いますが、彼岸と此岸(あの世とこの世、すなわちご先祖と私達)とが交流する行事であり、そのための場所が「お墓」ということになります。

仏教のルーツであるインドや中国にお彼岸という行事はありません。仏教を開いたお釈迦様は、もともと霊魂の存在を認めていません。人は死後49日で別の存在に生まれ変わる(輪廻転生)か、輪廻転生の世界から解脱するか、いずれかの道に進むというのです。したがって、ご先祖さまがあの世にとどまり、お盆やお彼岸の時期になるとこの世にやってくるというのはお釈迦様本来の教えではなく、仏教が伝わる以前から存在していた、我が国古来の先祖崇拝信仰の名残なのです。

お彼岸を迎えるには、仏壇・仏具の掃除、お墓の掃除、供花やお供えをします。春は牡丹の花にちなんで牡丹餅、秋は萩の花にちなんでおはぎを供えます。お墓参りは、家族みんなで出かけましょう。お墓は家族全員でお守りしていくべきものです。両親がご先祖様を祀る姿は後の世代に受け継がれていくことでしょう。現代では現金を包むことを指す「お香典」ですが、本来はお香(お線香)を届けたことに由来します。仏壇やお墓にお参りできないときや、他家に伺うときはお供えの他にお線香を届けましょう。彼岸会はお寺で故人の供養をすると同時に「六波羅蜜」の教えを会得する大事な行事です。他の仏教国にはあまり見られない行事ですが、古来の民俗信仰とも深く結びついた「盂蘭盆会」や「施餓鬼会」とともに仏教の年中行事の中でも最も一般的に盛んに行なわれています。