お盆とは、一年に一度先祖や故人の霊が親族の下に戻る期間のことです。仏教国の中でも日本独特の考え方ですが、その霊を迎えるのが迎え盆です。親族も集まって一緒にお墓参りをしたり、団らんしたりと貴重な時間になるのではないかと思います。年に一度の迎え盆には細かな決まりが多いので、つつがなく過ごすためにはそういった決まりを理解することが大切です。迎え盆は、普通はお盆の最初の日である13日を指し、お盆の入りとも呼ばれます。迎え火を焚くなどして、お盆の間中に家に滞在する先祖の霊をお迎えするために行われます。
迎え盆には準備するものが多く、お盆が始まる以前から準備をする必要があります。まず、12日の夜は精霊棚を作ります。精霊棚はお盆に先祖に供え物を供えるための棚で、盆棚とも呼ばれます。仏壇の前に設置することが多いですが、地方によっては玄関であったり、お墓に置くこともあります。お盆の風習が盛んな地域では四隅に笹竹を立て、その間に縄を渡した大きな祭壇を設けて精霊棚の飾り付けをします。しかし、今日の住宅事情から、こじんまりとした簡易な精霊棚を作ることが多いです。精霊棚の準備には小机・まこもの敷物・お供え物・精霊馬・盆提灯を用意し、机を仏壇の前に据え、まこもの敷物を敷きます。そして仏壇から位牌を取り出して、机の中央に安置し、お供え物、精霊馬をお供えします。お供え物には新鮮な野菜や果物、故人の好きな食べ物を選びます。最後に盆提灯を精霊棚の脇に飾ります。盆提灯は、2つの提灯を対になるように左右に飾ります。ここでは一般的な精霊棚の準備について紹介しましたが、精霊棚に飾るものや供えるものには地域差もありますので、お住いの地域で何を用意すればいいのかは確認することをオススメします。
迎え火は祖先の霊を家へ招く、迎え盆の中でも特に重要なものです。迎え火の準備に必要なものはおがらと素焼きのお皿である焙烙(ほうろく)、盆提灯です。迎え火を焚く前にはお墓参りに行きます。迎え火は13日にお墓参りをした後に焚きます。お墓参りを午前中に済ませ、暗くなる前、夕方頃に焚くのが通例で「迎えは早く、帰りは遅く」と言われるように、13日はできるだけ早くお墓に行くのが良いとされています。先祖の霊は夜になるまで移動せず、迎え火を暗い中の目印としていると考えられるためです。迎え火のやり方にはお墓で焚くものと玄関や庭先で焚くものがあります。お墓で焚くやり方ではお墓参りした後に提灯を灯して、その明かりを点けたまま帰ります。明かりに先祖の霊が導かれると言われています。玄関や庭先で焚くやり方ではお墓参りから帰った後に玄関や庭先で迎え火を焚きます。やり方としてはまず炮烙の上におがらを乗せ、火を点けます。それから盆提灯を玄関や仏壇のそばに置いて明かりを灯します。おがらを焚いた煙や提灯の光に導かれて先祖の霊が帰ってきます。マンションや住まいなど玄関で迎え火を焚けないご家庭は火を焚かず、提灯のみでも大丈夫です。
精霊馬(しょうりょううま)とはお盆のお供え物の一つで、精霊棚に飾ります。作り方はきゅうりやナスにつまようじや割り箸を四本刺すだけです。精霊馬は祖先の霊があの世とこの世を行き来する乗り物とされており、きゅうりが馬、ナスが牛に見立てたものです。このことから両者を区別するためにきゅうりを精霊馬、ナスを精霊牛(しょうりょううし)と呼ぶこともあります。馬と牛がいるのは「ご先祖さまに早く迎えられるよう、迎え盆では足の速い馬に乗ってもらい、ゆっくり帰られるよう、送り盆では足の遅い牛に乗ってもらう」という考え方に基づくのが一般的です。しかし、地域によっては逆に迎え盆ではゆっくり迎え、送り盆では早く帰ってもらうという考え方をするところもあるようです。精霊馬は関東地方では13日の迎え盆、北海道から中部地方では16日の送り盆に準備するようです。