箸といえば、ほとんどの日本人が毎日使う生活必需品です。8月4日は「箸の日」というのをご存知ですか?また、「箸の日」は8月4日と11月11日の2回あり、箸の日には「箸供養」という行事が行われます。普段の生活で箸を使うようになったのは聖徳太子がきっかけと言われています。607年に遣隋使として派遣された小野妹子たちが持ち帰った箸とさじのセットを、聖徳太子が初めて朝廷の儀式に用い、朝廷での食事に取り入れ、箸を使う風習が民衆にも広がったと伝えられています。
日本では、箸は単なる食事用だけではなく、人生の節目となるいろいろな場面で、「縁結び箸」「夫婦箸」「厄除箸」「寿箸」と名付けられた、おめでたい箸が神社から授与される風習があります。また、遠く離れて住む家族に「陰膳」を供える風習もあります。柳田国男は「社交も人生の大事ごとく飲食(箸)によって完成する」と言っているように、箸文化は日本人にとって極めて大切なものです。
8月4日の「箸の日」は、愛知県名古屋市にある、箸などの製造、卸、販売を手掛ける株式会社藤本商會本店が、毎日の食事で欠かせない箸への感謝を表すことを目的として制定しました。8月4日は「8(は)4(し)」の語呂合わせです。藤本商會本店は、愛知県豊橋市の龍拈寺に「箸塚」の石碑を寄贈し、毎年8月4日には使い古された箸を供養する「箸供養」を行っています。藤本社長は、この箸文化を重視し、毎年箸供養を催しており、当日使用済みの箸を持参した人には新しい箸を差し上げ、さらにはうどん、フライドポテト、団子、かき氷、うちわなどを15年以上、無料奉仕しています。
11月11日の「箸の日」は、2015年に韓国で開催された「箸の国際学術シンポジウム」において、箸の文化を研究する日本、中国、韓国の専門家や学者が、箸の世界遺産登録を目指して制定したものです。箸の起源は定かではありませんが、弥生時代末期の遺跡で、細く削った竹を半分に折り曲げたトングのような形の「折箸(おりはし)」が出土しています。中国の歴史書「魏志倭人伝」では、日本人は手づかみで食事をしていると書かれていますが、日本の「古事記(712年)」や「日本書紀(720年)」では神代の頃から箸は存在したという記述があり、祭祀や儀式の際に箸を使い、普段は手づかみで食事をしていたと考えられています。箸文化のもとで育てられた日本人として箸の日だけではなく、日々、お箸に感謝をして食事を美味しく頂きたいものです。