夏の風物詩ともいわれる「四万六千日(しまんろくせんにち)」は、毎年多くの人で賑わう行事ですが、由来や意味はご存知ですか?「四万六千日」が行われることで有名なのは東京都台東区の浅草寺です。境内では「ほおずき市」が開催され、たくさんの人で賑わうので有名ですが、今年は新型コロナウィルスの影響で開催が中止となって、残念です。ちなみに「四万六千日」は浅草寺以外にも日本各地で行われています(ひょっとしたら開催されているところもあるかもしれないのでチェックしてみてください)。
四万六千日とは、46,000日分の功徳がある縁日という意味です。功徳とは、良い行いのことです。功徳を積むことで果報やご利益を受けられるとされています。また、縁日とは、特定の神仏に縁のある日のことで、この日にその神仏にお参りをすると普段以上にご利益があると信じられています。つまり、四万六千日に参拝すれば、46,000日分参拝したのと同じ御利益があるということになります。四万六千日は仏教の菩薩の一尊である、観世音菩薩の縁日です。観世音菩薩は悟りを開くために修行を積んでいる修行者です。修行者ではありますが、救いを求める人々のお願いを聞き、助けてくれるということで庶民の信仰の対象となってきました。観世音菩薩の縁日は、毎月18日ですが、室町時代の末期頃になると18日以外の日に「この日に参詣すると100日、1,000日分の功徳がある」とされる「功徳日」という特別な縁日が追加されました。功徳日は寺社によって異なりますが、浅草寺では年12回の功徳日を設けており、最も功徳があるのが7月10日の46,000日で、特にこの日は「四万六千日」と呼ばれています。
四万六千日には、「ほおずき市」が行われます。ほおずき市の起源は江戸時代中期の明和年間(1764年~1772年)といわれ、最初にほおずき市が行われていたのは東京都港区芝の愛宕神社でした。ほおずきを丸呑みすることで、大人は持病を、子供は腹の中にいると考えられていた虫による腹痛などを治すことができる薬草として評判だったそうです。愛宕神社の縁日も「四万六千日」と呼ばれていたことから、「四万六千日」の本家とされる浅草寺でもほおずき市が行われるようになり、愛宕神社以上に盛大になったようです。
ほおずきの他に、「とうもろこし」を売っている寺社もあります。昔、「赤とうもろこし」を吊るしていた農家だけが落雷の被害にあっても無事だったことから、江戸時代末期の文化年間(1804年~1818年)以降、「雷避け」として赤とうもろこしが売られるようになったそうです。しかし、明治時代初期頃に赤とうもろこしが不作で出回らず、人々が浅草寺に雷避けのお守りを求めたことから、「雷除札」という竹串に挟んだ三角形の守護札が授与されるようになりました。現在も四万六千日に「雷除札」が授与されています。また、石川県金沢市東山の観音院などでは、今もとうもろこしが売られ、軒先に吊るすと商売繁盛や魔除けなどのご利益があると言われています。
その日に参拝するだけで46,000日分のご利益があると言われると、多くの人で賑わうのも納得です。寺社に参拝した際には、御朱印をいただく人も多いと思いますが、四万六千日の日限定の御朱印がある寺社も多く、整理券を配って対応する寺社もありますので、事前にチェックしておくと安心です。話は変わりますが、北上市の国見山廃寺跡に三十三観音があり、いくつかの観世音菩薩があるそうです。国見山は12世紀頃、岩手の文化の中心地だったらしく、遺跡となっていることをテレビで知りました。そこに観世音菩薩が設置されていた経緯とかはわからないですが、観世音菩薩のある寺社だけでなく、こういったところにも訪れてみたいと思いました