牧草収穫作業

岩手県は畜産と酪農地帯でもあります。牛の餌は「粗飼料(そしりょう)」と「濃厚飼料」の大きく2種類に分かれます。粗飼料とは、草あるいは草をもとに作られた餌です。牧草や藁やすすき、乾草(牧草を乾かしたもの)、ほかにサイレージという乳酸発酵させた餌などが当てはまります。粗飼料が主食にあたり、その牛たちの食料となるメインが牧草です。濃厚飼料とは、とうもろこしや大豆、麦やふすま(小麦を製麦したときに出る皮・糠)、糠(米ぬかなど)などを粉末状にしたものや、圧ペン加工(蒸気をかけて潰して外殻を割ること)したりしたものです。こちらは牛にとって主菜(メインのおかず)に当たります。

粗飼料は、牧草の育て方、収穫期で栄養価が変わり、ひいては牛の品質に影響を与える重要なものです。粗飼料は濃厚飼料と違って繊維質が多いので、牛の健康と成長において重要な役割(牛の第1胃であるルーメン(食用として提供される時は「ミノ」と呼ばれる内臓)を鍛える)を担っており、粗飼料を十分に食べないと牛は健康に育たない可能性が高いのです。牧草を育て、毎年、この頃に刈り入れする最初に収穫する牧草は「一番牧草」といわれ、食物繊維が豊富でとても栄養価が高く味も良いので、牛たちの大好物です。一番牧草を与える時期になると牛たちは喜んで腹いっぱいに食べてくれるので大切な粗飼料なのです。ちなみに一番牧草が刈り取られた後に再び生えてくる二番牧草は8月下旬頃の収穫になります。日本で販売されている牧草の大半は一番牧草です。

動画のように、牧草収穫作業は大型農業機械によって行われています。当社で働く大型機械好きな人たちには、様々な機械を使って行う、これらの作業は飽きがこない様子です。牧草は、草刈り機(モア)により、刈り払われていきます。みるみるうちに一面の牧草がすべて刈り払われました。刈られた牧草は、テッダーという牧草の反転機で、十分に乾燥するまで、反転が繰り返されます。乾燥されたら、集草機(レーキー)で、ロールしやすいように列に集めます。ロールしやすいように集められた牧草は、ロールベーラーで、鶏が卵を産むようにロールを作り出していきます。ロールされた牧草がフロントローダーで並べられていきます。ロール状の牧草をラッパーでラッピングします。あっという間にラッピングされたロールが出来上がります。牧草はフロントローダーでトレーラーに積まれて酪農家・畜産家へ運ばれていきます。

牧草収穫も当社にとっては大きな1つのイベントで、今年で3年目の収穫となります。天候に恵まれ、昨年より10日以上早く終えることができました。金ケ崎町の千貫石に40haの牧草地がありますが、品種は、リードカナリーという単種と、オーチャードとチモシーの混播となります。リードカナリーは多湿条件に対する適応性が高く、越冬性に極めて優れ、環境適応性も高いので永続性に優れ、粗飼料を持続的に低コストで生産できます。オーチャードとチモシーも耐寒性が高く、北海道や東北の高冷地でよく栽培されています。東北地域では我が国の多湿な環境に適応し、持続安定して生産が可能な草種があり、採草用牧草として粗飼料の生産に役立っています。