毎月19日は、食育の日です。「食育によって生涯に渡って健全な心身を培い、豊かな人間性を育む」という食育基本法の理念は、明治時代に「食育医学」を提唱したひとりの医師に行き着きます。「食育」という言葉は、明治時代の医師・石塚左玄が著作のなかで記した「体育知育才育は即ち食育なり」という一文に由来します。石塚左玄は「玄米・食養」の元祖で、栄養学がまだ学問として確立されていない時代に、医食同源としての食養を普及し食育を提唱しました。「生きることは食べること、食べることは生きること」、その思想は、現在世界的な広がりを見せるマクロビオティックの提唱者でもある桜沢如一らによって受け継がれました。
現代を生きる私達の生活に石塚左玄の思想が大きな影響を与えており、食育基本法は、国家レベルで食に取り組む、世界的にも例のない法律とされているそうです。現在、国が特に力を入れて取り組んでいるのが、「朝食を食べる」「バランスの良い食事をとる」「農林漁業体験をする」の3点です。朝食を食べる習慣は、食事の栄養バランス、生活リズム、ストレスなどの心の健康、学力・学習習慣や体力など、毎日の生活に深く関係しています。バランスの良い食事については、誰もが意識していても難しいのかもしれません。「食事バランスガイド」に1日に、「何を」「どれだけ」食べたら良いかの参考として食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したものが書かれているので参考にしてみてください。農林業体験とは、田植え(種まき)、稲刈り、野菜の収穫、家畜の世話などを通して、米や野菜、肉、魚など、自分で食べるものを育てて収穫することで、食に対する関心や興味を育むというものです。地域色のある食文化や豊かな味覚を持つバランスのとれた「日本型食生活」を掲げて活動しています。
これらの具体的な取り組みは、農林水産省のホームページで公開されており、『「食育」ってどんないいことがあるの?』というパンフレットにもまとめられています。また、毎月19日の「食育の日」や、その前後の週に各地で様々な食育の普及啓発活動が展開されており、毎年6月の食育月間にも、国、地方公共団体、関係団体などが協力して、食育を推進する取り組みを実施しています。添加物だらけの食品、農薬まみれの農産物、遺伝子組み換え食品やゲノム編集食品などが流通しており、私達の口に入る食べ物は不自然なものが多いという現実があります。つまり、まともなものが食べられなくなる時代に入ってきているといえます。これらが人間の味覚を壊していること、生活習慣病患者の増加とともに「肥満」への注目や食の安全への意識が高まる中で、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができるようにならなければなりません。環境汚染や食品ロス、利便性至上主義をよしとする不自然な世の中に生きている私達は、自らの食生活や環境を大きく変える努力が求められています。ぜひこの機会に農林水産省や各自治体のホームページをチェックして食育に関心を持っていただき、無知を智に、食生活を、そして生活を変える食育の取り組みを実践してみてはいかがでしょうか。