幕張メッセでCEATEC(Combined Exhibition of Advanced Technologies)が開催され、見学してきました。このイベントはあらゆる産業・業種による「CPS(Cyber Physical System)/IoT(Internet of Things)」と「共創」をテーマとしたビジネス創出のための、人と技術・情報が一堂に会する場とし、経済発展と社会的課題の解決を両立するスマート社会(Society 5.0)の実現を目指す総合展です。Society 5.0は、内閣府の第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたものですが、人類は気候変動・水循環とサイバーテロという、これら二つの不確定要素から安全保障上の脅威に直面しています。同時に持続可能性が高くて、より公平な脱炭素時代に移行するための、困難ながらも大きな機会をもたらしてくれる、実効性のあるプランの構想が必要となっており、共存共栄するための新たな暮らし方を指し示す必要があります。そうしたプランの構想も、それを実施するためのテクノロジーやノウハウもありますが、そのどちらも人間の意識が根本的に変化しないかぎり、何の役にも立たないでしょう。経済活動をより効率的に管理する新しいコミュニケーション・テクノロジー(5Gなど)や経済活動をより効率的に動かす輸送手段については進展が見られますが、ドイツと比べて日本はますますコストのかかる原子力と化石燃料エネルギーに依存しています。経済活動に、より効率的に動力を提供する新しいエネルギー源、限界費用を減少させる再生可能エネルギーにシフトしているドイツと比べると日本の産業競争力は心もとないというのが現状ではないでしょうか。農業についてのカンファレンスでは今年4月から農研機構が運営するスマートフードチェーン「WAGRI」(慶應義塾大学が開発)が育種や生産の農業データ連携基盤というだけでなく、加工・流通・販売・消費までカバーしたマーケットイン型のトータルバリューチェーンの農業データ連携基盤であることを知りました。これが基本的な農業プラットフォームとなり、農機メーカーやICTベンダーがこのプラットフォームを使ったビジネスモデルを供給することになるようです。ユーザー数や利用頻度が増えればプラットフォームの価値が増していきます。毎年、激しさを増す気候変動により農産物の安定生産が脅かされています。中山間地の耕作放棄地増加が平野部の水害に影響していることもあると思います。日本だけでなく世界の地域によって食料ニーズや需給バランスが大きく異なってくることでしょう。超省力・高生産なスマート農業で食糧生産性問題や人手不足解消に対応し、欲しい消費者に欲しい時に配送することで食品ロスの削減に対応し、AIのサポートで最適な営農計画を立てて食料の安定生産に貢献することを目指しているようです。政府が考えている今年3月から2年間をかけて行うスマート農業実証プロジェクトはポテンシャルの高い日本の農業をイノベーションでグローバルな産業競争力を高めていきたいということでした(実際に英米中に比べて穀物収量性が日本は低いという課題があります)。今年1月に発足した九州・沖縄圏スマートフードチェーンプロジェクトは、日本の食の成長産業化、アジアへの輸出拡大、高付加価値農畜産物や加工品の強化を狙っています。最も遅れているといわれている農業分野のITリテラシーを紙ベースからデジタル情報化し、デジタルトランスフォーメーションに進化させていかなければなりませんが、今年も猛烈な台風が日本を襲い、世界中で脅威となっている地球温暖化が農業や社会インフラに既に大きな打撃を与えていることを考えると持続可能性のある社会にしていくためにグリーンエネルギーや協働型IoTインフラを待ったなしにスピーディに整備していくことが必要だと思いました。