有機農業及び有機食品の動向

農林水産政策研究所主催のセミナーに参加してきました。平成30年度から3年間の予定で、諸外国の有機農業推進等に係る制度や施策の実情、東京オリンピック・パラリンピックを踏まえた有機食品市場の動向と将来予測を明らかにすべく、二つの共同研究グループによる委託研究を行っており、今回のセミナーでは初年度の成果として取りまとめられたEUの有機食品市場の動向及び有機農業振興のための戦略についての報告でした。セミナー聴講は70名の応募に対して140名超の応募があり、関心の高さが伺えました。有機農業は、生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活性化等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システムであり、コーデックス委員会が作成した国際基準に規定されています。また、国連で世界各国が合意した持続可能な開発目標SDGsSustainable Development Goals)に有機農業は貢献するものであり、日本も農業の成長産業化のために有機農産物安定供給体制の構築と気候変動・生物多様性に配慮した持続可能な農林水産業の推進のために有機農業・環境保全型農業の拡大を優先課題として取り組むと位置づけています。科学論文レビューにおいても水保全や土壌肥沃などの点で有機農業は慣行農業に比べて有意差があると証明されています。しかし、有機農業及び有機食品の生産と消費において世界の9割は欧米が占めており、常に需要が供給を上回っている状態なので国産だけでは需要を満たせず、域外からの輸入が増加し続けています。日本ではフランスの自然食品専門店「ビオセボン」が東京を中心に出店が拡大し、イオンも有機食品強化を全社的に取り組んでいます。消費者は有機食品に対して持続可能な地球環境に貢献すること以上に品質・味が良い、健康に良いというイメージを持ったことも大きいと思います。世界各国が政策として有機農業及び有機食品の振興を数値目標とともに義務付けているので農業もこの変化に対応してゆかなければ生き残れないのではないかと感じました。